ホームズの世界
The World of Holmes 
No.44



Higurashi, Masamichi “Conan Doyle, The Strand Magazine, and the Agent” 日暮雅通「序説 コナン・ドイルと『ストランド』誌とエージェント」 WH No.44 (2021),16-27p
The author discusses how and when Conan Doyle’s works were published, the history of the Strand Magazine, and the literary agent who mediated Doyle and the Strand Magazine.
ホームズ物語や多くのその他の作品を『ストランド』に発表したコナン・ドイルと同誌は、文学的な絆で結ばれていた。フランスをはじめとする海外の短編小説をさかんに翻訳掲載したことも、特徴のひとつであった、と指摘する。また、掲載開始に重要な役割を果たしたのが、リテラリー・エージェントのA・P・ワットで、1878年頃イギリスでビジネスを始めた世界最古のリテラリー・エージェントだった。
  The Literary Agent The Strand Magazine


Yu, Minxin “Gender Problems in “The Scandal in Bohemia”” 余玟欣「「ボヘミアの醜聞」にみるジェンダー問題 アイリーン・アドラーを例として」 WH No.44 (2021),28-37p
The author analyses female images in the Canon by taking Irene Adler as an example and based on gender studies developed after 1960s. She thinks Irene to be alter ego of Sherlock Holmes, and in order to eliminate the speculation that there was a special feeling between the two, Doyle might have eliminated her and introduced Professor Moriarty instead.
近代以降に誕生したセクシュアリティ概念と、1960年代以降に発展したジェンダー研究に基づいて正典における女性像を分析することによって、アイリーンというキャラクターの重要性と彼女とホームズの関係を分析する。ホームズにとってアイリーンは自分と同じ水準である存在であり、二人の間に特殊な感情があったという推測を排除するため、彼女を排してして代わりにモリアーティ教授を登場させたのではないかと考察する。
  SCAN


Tachibana, Makiko “Irene Adler ? Seeking for her Image as an Opera Singer” 橘牧子「アイリーン・アドラー オペラ歌手の側面からそのイメージを探る」 WH No.44 (2021),38-49p
A study on the model for Irene Adler among Opera singers at the time of Holmes. The author thinks Lillian Nordica would be the model of Irene as she had several common points with Irene, including her real last name Norton.
ホームズがThe Womanと呼んだアイリーン・アドラーのモデルについて考察する。実在の女性歌手を7名挙げ、その中でもリリアン・ノルディカこそ、アイリーン・アドラーのモデルではないか、と指摘する。リリアンの本名がリリアン・ノートンであることと「ボヘミアの醜聞」でホームズ宛に残した手紙の署名、アイリーン・ノートンが、本物の彼女への手掛かりとなっているように思われる、と結論する。
  SCAN


Ueda, Hirotaka “” The Scandal in Bohemia” and Detective Stories by Edgar Alan Poe” 植田弘隆「満足すべきものではないが、調べたことがまったく無駄だったわけでもない(『四つの署名』) 「ボヘミアの醜聞」とポーの探偵小説」 WH No.44 (2021),50-61p
The author compares SCAN and REDH with Poe’s three detective stories. He sees that Conan Doyle evaluated Poe’s work highly and followed his creating method, but there are originalities in Doyle’s style of writing.
探偵小説の始祖ポーとそのスタイルを確立したコナン・ドイル。「ボヘミアの醜聞」とポーの探偵小説2編の相違として、「ボヘミアの醜聞」は短編とはいえ3章に分かれている。1章の始まりは三つの部分に分けることが出来るが、冒頭の“シャーロック・ホームズは彼女のことをいつまでも『あの女』とだけいう”、これは『モルグ街の殺人事件』の序文(『命題』)にあたる、と指摘する。つまり、この部分はポーの序文の役割を果たすものでこれ以下のストーリーは、これを物語化したもの、あるいは『注釈』である、と結論する
  SCAN, REDH, Literary Parallels and Comparisons

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Kumagai, Akira “The First Six Holmes Stories and Doyle’s Decision to Become a Full-time Writer” 熊谷彰「最初のホームズ6短編とドイル作家専業の決断」 WH No.44 (2021),62-74p
The author studies the letters by Doyle’s literary agent Watt, and concludes Doyle decided to be a full-time writer in 1891, not because the first Sherlock Holmes short stories became popular, but because he found it impossible to balance medical practice and writing.
最初の6短編の執筆が、ドイルの作家専業という決断にどんな意味を持ったかを考察する。ドイルにとって、ホームズ短編の執筆は二重の意味で初めての経験だった。第一に、これはロンドンでの最初の纏まった作家業だった。第二に、これはワットを仲介役とする初めての纏まった作家業であった。ドイルはこういう作家業を経験したときに、医業との両立は無理だと解ったのではないか。そこにインフルエンザで倒れたことが加わって、1891年5月に作家専念を決意する。つまりホームズ短編の大人気ではなく、ロンドンでの連続執筆が作家専業の決断につながったと、著者は結論する。
    The Literary Agent


Higurashi, Masamichi “Pastiches Anchored by Women” 日暮雅通「女性主体のパスティーシュについて 最近の作品から」W WH No.44 (2021),75-81p
The author introduces recent pastiches in which females took the main role with the following categories: 1)Irene Adler is the main character. 2)Holmes is female. 3)The female family or offspring of Holmes, Watson, or other characters is the main character. 4)Simply female is the main character.
ホームズに関しての著作で、女性をテーマにした活字作品(パスティーシュ等)を4つに分けて紹介する。1)アイリーンが主人公のもの(スピンオフ)。2)ホームズが女性であるもの(ジェンダーを意識した作品)。3)ホームズやワトスン、あるいはサブキャラクターの、家族や子孫である女性が主人公のもの。4)単に女性が主人公のもの。
  Parodies and Pastiches


Nakatsuru, Enichi “Foot and Shoes in Sherlock Holmes Stories” 仲津留恵日「シャーロック・ホームズをめぐる靴と足」 WH No.44 (2021),90-100p
The author examines the wearables for the foot, i.e. boots, shoes or prothetic limbs which appear in the Canon. Deformation or disease of the foot and leg are also discussed.
シリーズ第一作から語られる膝や靴の重要性と、繰り返し語られる『靴を見るのは基本』について検証する。シリーズに登場する靴のいろいろ、義足、足の疾患、車椅子etc。他にレストレイドの左足、ホームズの足の攣り、などを考察することで、当時の時代背景、医学、身分など様々な要素が物語から読み取れると結論する。
    Clothing


Hirakawa, Hiroshi “Sherlock Holmes and Mariners Act ? Legal Significance of “The Gloria Scott”” 平川宏「シャーロック・ホームズと船員法 「グロリア・スコット号事件」の法的意義」 WH No.44 (2021),101-108p
The author tries to verify the theory that the authority of the captain defined in the Mariners Act of Japan is originated from “The Gloria Scott”. By studying discussions by Japanese and American professors, the author concludes the theory is highly probable.
日本の船員法に規定される『船長の権限』はホームズ物語の「グロリア・スコット号事件」にその起源がある。という説を明確に唱える専門家の論考については、専門家への聞き取りを通じても見つけることが出来なかった。しかし2018年にノバ・サウスカロライナ大学のロバート・M・ジャービス教授が海事の学術誌に『シャーロック・ホームズに由来する海事の起源』という論考を発表していることは、現代の船員法に影響を与えていることが事実としてその可能性が高いことを示唆しているのではないか、と結論する。
    GLOR


Endo, Takahiko “In Search of the Original Work of “Banken”, Sherlock Holmes Film That Was Shown in Japan” 遠藤尚彦「『蠻犬』、『妖犬』その後」の「その後」 『蠻犬』の正体を求めて」 H No.44 (2021),109-120p
The author made further research on the original film of “Banken”, which was shown in Japan in 1915, and concluded it was “Das Unheimliche Zinner” produced in Germany in 1915.
筆者が、第40回JSHC全国大会にて報告した1915年公開のドイツ製の2本のホームズ映画『蠻犬』と『妖犬』。その後の調査の結果、ドイツのサイレント期の映画「バスカヴィル・シリーズ」の第3作“Das Unheimliche Zimmer”と、第4作“Die Saga Vom Hund Von Baskerville”であると結論する。
    HOUN, TV Dramas & Movies,


Ando, Ryoichi “Sherlock Holmes as a Researcher ? The Man Who Might Have Received the Nobel Prize for Three Times” 安藤亮一「研究者としてのシャーロック・ホームズ ノーベル賞を3回受賞できた男」 WH No.44 (2021),121-129p
The author looks at Holmes’s achievement as a scientist/researcher, and concludes he had chances to be awarded the Nobel Prize for three times; prize in medicine for his blood detection method, prize in chemistry for his research on coal tar derivatives, and prize for peace for his contribution to improve security in the world.
ホームズの極めて優れた科学者・研究者としての成果について考察する。ホームズは1908年に抗原抗体反応の発見と応用で、ノーベル生理学・医学賞を。1954年にコールタール誘導体に含まれる芳香族化合物(60個の炭素原子のみでできている)を単離したことについて、ノーベル化学賞を。1901年にモリアーティ教授が作り上げた『ヨーロッパ最大の強力な悪人組織』を壊滅させた功績により、ノーベル平和賞を。以上ノーベル賞を3回受賞することが可能であった、と結論する。
    Sherlock Holmes-Intellect


Watanabe, Mineki “British Country Houses and Furnishings” 渡辺峯樹「英国のお屋敷と調度品」 WH No.44 (2021),130-141p
The author picks up the country houses that appear in the Canon, and discusses the features by each era. Several furnishings are also discussed.
正典の中に登場するお屋敷について、建築時期順にその特徴について紹介する。また筆者が選んだ調度品についても考察する。
    the United Kingdom


Ishii, Takashi “Consideration on Photographs in the Canon” 石井貴志「聖典における“写真”に関する一考察 W・K・バルトンの写真入門書から読み解く」 WH No.44 (2021),142-153p
The author takes notice of the description that Spaulding ‘snapped away and developed his pictures’, and considers the kind of camera he used. He also points out Conan Doyle used such expression as above because he was photo mania influenced by W .K. Burton, his childhood friend.
「赤毛組合」の原文では、カメラ好きのスポールデングが地下室に持ち込む未現像の写真は、なぜ複数形 (his pictures) なのだろうか?と疑問を提起する。これは“snap away” が“写真を撮りまくる”という意味から複数形で当たり前と指摘する。更にコナン・ドイルが、冴えない質屋の親父に似つかわしくない洒落た言葉を使わせてしまったのは、ドイル自身がかなりの写真マニアで、それは幼馴染みのW.K.Burtonの影響であった、と結論する。
    REDH, The Literary Agent- BIography


Shinozuka, Yoji “Has Murakami Haruki Read Sherlock Holmes Stories?” 篠塚洋治「村上春樹は、シャーロック・ホームズを読んだか 『羊をめぐる冒険』をめぐって」 WH No.44 (2021),154-161p
The author sees it is pretty interesting that the main character read “the Casebook of Sherlock Holmes” first in “A Wild Sheep Chase” written by Murakami, Haruki. He also infers Murakami translated the quoted part from BLAN by himself by comparing the works by other translators and the original.
筆者は『羊をめぐる冒険』の主人公が、文中で最初に「事件簿」を読んだのは、かなり興味深いと指摘する。「白面の兵士」の冒頭の言葉が、村上にとってかなり印象的だったのだろうと考察し、英語の原文も読んでいて、それを村上自身が訳して文中に用いたのではないか、と結論する。
    Literary Parallels & Comparisons, Japan


Kobayashi, Yumi “On the Location of the Pawnbroker 小林由美「質屋の場所について」 WH No.44 (2021),169-175p
Saxe-Coburg Square where Jabez Wilson’s pawnbroker shop was located is not a real place-name. By studying the descriptions in the Canon, the author indicates the Square was Queen Square that existed in the south of Aldersgate Street in 1890s.
「赤毛組合」の舞台であるジェイベズ・ウィルソンの質屋があったのは、サクス・コバーグ・スクエア(Suxe-Coburg Square)とされているが、実在の地名ではない。著者は1890年前後の地図に、オルダーズゲイト・ストリートを南下した右手に『クイーン・スクエア(Queen Square)』という小さなスクエアを発見する。更にドイルが名付けた『サクス・コバーグ』がヴィクトリア女王の夫君アルバート公の家名、サクス・コバーグ・ゴータ(Saxe-Coburg and Gotha)からとった名であることを突き止め、ドイルがクイーンをサクス・コバーグに置き換えたと推測する。故に質屋のあった場所は、オルダーズゲイト・ストリートの裏手(Bartholomew CI,Barbican,London ECIA 7ES UK)にかつてあった『クイーン・スクエア』であると結論する。
    REDH


Ando, Shoko, Koike, Hiroko Nakashima, Hiroko “The Opening of Sherlock Holmes Stories” 安藤祥子/小池浩子/中島ひろ子「シャーロック・ホームズの冒頭 “The Beginning of SHERLOCK HOLMES”」 WH No.44 (2021),181-188p
The report on the results of the best opening of Sherlock Holmes stories collected by the authors. With 39 votes collected via mails, Twitter and Facebook, the best three stories were:1.SCAN, 2. SIGN, 3.MUSG.
JSHC会員に、ホームズ物語冒頭のみに絞ったアンケートを行った。冒頭の定義として、依頼人が登場するまでだが、既に依頼人がいる場合は、事件の概要を依頼人が話し始めるまで、とする。正典60編に限って行われた集計では、上位の3位「マスグレイヴ家の儀式書」2位「四つの署名」1位「ボヘミアの醜聞」という結果になった。
    Rating of the Tales


Akeyama, Ichiro “Digital Resources of Sherlock Holmes” 明山一郎「Digital Resources on Sherlock Holmes」 WH No.44 (2021),189-203p
The author verifies the time the word Sherlockian began to be used. He also introduces digital resources that can be useful for Sherlockian studies.
シャーロッキアン(Sherlockian)という言葉が、いつから使われるようになったのかをデジタルリソースを使って検証する。利用したリソースはJapan Knowledge, Oxford English Dictionary, Hathi Trust, Internet Archive “Wayback Machine” 『ホームズ愛好家、研究家』という意味の“Sherlockian”の古い用例調査を通じて、ホームズ研究に使えるデジタルリソースを紹介する。
    Courses of Study



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